2024/12/03
小林
ゲーム名 | 東方帝国 |
原題 | Eastern Empires |
人数 | 3〜18人 |
プレイ時間 | 360~720分 |
発売年 | 2021年 |
2024年某月某日、都内某所。1プレイに10時間以上を要するとされる東方帝国/Eastern Empireをプレイするために7人の男たちが集まった。ここではその記録を振り返りたい。
2024/10/23
「西方帝国/東方帝国」真の重ゲーがここに
8000年の頂点に立つのは誰だ 「西方帝国/東方帝国」は、最後の氷河期が終わった紀元前8000年頃から、鉄器時代の終わり(0年)までの 8000年間にわたる、古代文明の発展をテーマにしたゲームです。 プレイヤーは文明の指導者となって領土を拡大し、交易で得た利益で文明を発展させていきます。 「西方帝国」と「東方帝国」は同じルールであり、「西方帝国」はヨーロッパ~西アジアを、「東方帝国」は中央アジア~インドを舞台としています。 元々存在した「大いなる文明の曙(Mega Civilization)」というゲームを2つに分けたのが「西方帝国/東方帝国」であり、片方だけでも9人まで、つなげると18人までプレイすることができます。 「西方帝国/東方帝国」は、主に 「①人口増加~移動~紛争~都市の建設」 と、 「②交易~災害発生~技術(文明進歩)の購入」 の2つのフェイズを通じて、ターンが進行します。 ①では、人口を増やして領土を拡大し、他の文明と紛争して生き残った人口で都市を建設します。 ゲーム開始時に人口は1人しかいないのですが、毎ターン倍々に増えていくので、あっという間に盤面は埋まっていきます。 領土が足りなくなったら他の文明と紛争です。紛争の解決手段はとてもシンプルで、1対1で討ち合い、多い方が勝つというものになります。 そうして、生き残った人口で都市を建設します。都市を建設すると交易のための商品を多く、またより価値の高いものを入手できるようになります。 ②では都市の数に応じて交易カードを入手し、他の文明とそれらを交換して価値を高め、様々な利益をもたらす技術を獲得します。 交易カードは、その多くは商品なのですが、中には後述する「災害」という不利益をもたらすカードも混じっています。 交易は以下のルールに従って行います。 この3つ目のルールが重要であり、 すなわち少なくとも1枚は正体を明かさずに、交易カードを相手に渡すことができます。 恐ろしい災害は相手に渡してしまいましょう(ただし、もっとひどい災害を相手からもらうかもしれません)。 交易の後、災害を解決し終えたら、入手した商品を用いて技術を購入します。 技術は移動・紛争を有利にするもの、災害を防ぐもの、交易を有利にするもの等、様々なものがあります。どの組み合わせが強いか考えながら獲得していくのも、このゲームの楽しいポイントです。 文明の発展度合いを踏まえ、どの年代相当なのかを示す時代継承テーブル(AST)を進めてターンは終了します。 いずれかの文明が鉄器時代後期に突入した時点でゲームは終了し、ASTの進捗、所有する都市数・技術で勝者を決定します。 デカァァァァァいッ説明不要!! このゲームの特徴として、まずその 圧倒的なコンポーネント量 が挙げられます。 「西方帝国」と「東方帝国」の両方を合わせると、 と、プレイ場所を探すにも一苦労なサイズです。 プレイ時間も長く、 過去に12人でプレイした際にはルール説明含め18時間を要しました。 まさに重ゲー(物理的にも時間的にも)という訳です。 そんな「西方帝国/東方帝国」ですが、すごいのは プレイ中ずっと面白いこと です。 この手の超重ゲーはダウンタイムの多さやプレイ時間そのものの長さから、途中でダレてしまうことがありがちですが、「西方帝国/東方帝国」では全くそういうところがありません。 それをもたらしているのは交易であり、ターン制のゲームにリアルタイムのフェイズが混ざることで良い刺激をもたらすと共に、災害を巡る駆け引きが交渉を熱くさせます。 災害は非常に厳しく、人口がいきなり半分になってしまうこともままあります。そうであれば交易をしない方が良いようにも思えるのですが、交易で得られる利益が指数関数的に伸びていく都合上、災害のリスクを負ってでも交易をした方が強いです。 そんな ハイリスク・ハイリターンの交渉をリアルタイムで行う という、従来のウォーゲームにはなかった要素がこのゲームを魅力的にしています。 (余談ですが、この交易はボードゲーム「ピット(Pit)」)に似ているので、HQGamesでは「ピット」と呼んでいます) また、災害の被害が大きいために、強いプレイヤーがずっと強いままで逆転の目がなくゲームが終わるという、重ゲーあるあるの展開にもなりにくいです。 災害の中には負けているプレイヤーに莫大な利益をもたらすものもあり、一度沈んだとしても希望をもってゲームを続けることができます。 人口も倍々ゲームで増加していくので、目まぐるしく戦況は変わっていくこととなります。 その他、移動のような時間がかかかりがちなフェイズを同時に行えるようにするルール設計によりプレイ時間を短縮する工夫があったりと、長時間でもダレずにプレイできるようになっています。 流石にプレイ時間が長いのでプレイには気合いがいるかもしれませんが、その面白さは折り紙付きですので、一度プレイしてはいかがでしょうか。
シバ/SABA(橙):小林
本記事の執筆者であり東方帝国の持ち主。
バビロン/BABYLON(グレー):永山
声がデカいことでおなじみ。
クシャーン/KUSHAN(茶):寺岡
HQGamesきっての穏健派。
ペルシア/PERSIA(紫):神谷
我らがHQGamesの代表。
ヌビア/NUBIA(青緑):齋田
理論派。ねちっこいプレイを好む。
インダス/INDUS(緑):中西
1日16時間ゲームをしている。
パルティア/PARTHIA(カーキ):木村
多人数ゲームでも容赦なく他プレイヤーをカットすることで恐れられている。
ターン1〜5
プレイ開始から1時間
2時間程度のゆったりとしたインストを終え、いよいよゲームがスタートした。
まずは各文明とも人口を増やし、領土を拡大するところからである。最初は人口が各文明1人ずつしか存在しないため、行動の選択肢がそれほど多くなく、ターンはすぐに回っていく。
こんなに早くもめるとは思っていなかったので、周りのプレイヤーたちは笑っている。
4ターン目も引き続きパルティアとバビロンが交渉。何とか争いが回避される中、クシャーンが史上初の都市を建設し、交易カードを入手。まだ他プレイヤーが交易カードを持っていないため、交易は行われずにターンが終了した。
5ターン目、ゲーム開始から倍々ゲームで増えてきた人口は、ついに各文明最大32人に達し、マップ上に収まり切らない事態に。余った人口を調整するために、パルティアとシバの間で史上初の戦闘が発生。また、各文明とも増えた人口で都市を建設し、文明ごとの領土が明確となってきた。
ターン6〜10
プレイ開始から2〜4時間
6,7ターン目も都市の建設ラッシュは続き、ついに交易カードを3枚以上手にした文明が現れたことで、7ターン目には史上初の交易が行われた。このターンでは文明進歩カードの購入金額までには届かなかったものの、各文明は後のターンに備え手札を整えた。
なお、6ターン目の終わりにはついにASTに差が生じ、バビロンとヌビアが一歩遅れる形となった。
8ターン目、交易カードを配り終えると2の山札がない。これはつまり、誰かが交易可能の災害である<謀反>(および交易不可の<火山噴火/地震>)を手札に持っているということである。全員の中に緊張が走る。先ほどまでとは打って変わり、たどたどしく交易が行われ、ついに災害カードが公開された。
まず<火山噴火/地震>を引いたのはパルティア!運の悪いことに火山に接する文明であったため、都市2つと人口4つが跡形もなく消えてしまった。あまりにも容赦のない災害に肩を落とすパルティア:木村。
次いで<謀反>を引いていたのはヌビア。<謀反>は受益者(当該災害をそのプレイヤーに手渡したプレイヤー)に都市を1つ併合させるという効果だが、<謀反>をヌビア:齋田に渡したのはシバ:小林であったため、ヌビアは隣接するシバの侵入を許すことに。災害を通じてゲームが動いていく。
また、パルティア:木村はカードを全てはたいて<原理主義>を購入。<原理主義>は隣接するエリア1つの都市及び人口をすべて破壊するという恐ろしい効果であり、好戦的なパルティア:木村らしいチョイスである。
その他の文明も各々に文明進歩を購入していき、一旦ここで昼休憩を挟むこととなった。
2以外の山札も残り少なくなる中、災害カードを公開するとなんと7枚!全体で都市が3つ破壊&9つ衰退し、さらに60点弱のダメージを叩き出したことで、各文明は一時休戦の様相となった。
なお、ここでインダス:中西も<原理主義>を購入。<原理主義>による攻撃は、同じく<原理主義>を持つプレイヤーには効かないため、<原理主義>を先に購入したパルティア:木村に対抗できる。災害に加え<原理主義>の恐怖も現れ、怯える他プレイヤー達であった。
10ターン目は各文明が復興に勤しむ中、そこに災害が再び襲い掛かる。パルティア:木村は運の悪いことに再び<火山噴火/地震>を引いてしまい、再建した都市が吹き飛ばされてしまう。その他の災害も続き、全体で都市が3つ破壊&7つ衰退&1つ併合し、加えて10点弱のダメージとなった。
※なお、この時は交易カードのシャッフルの仕方に誤りがあり、災害がめくれやすくなっていたことにご留意いただきたい。
この時点でASTは、条件の緩いシバとパルティアのみが青銅器時代中期に進み、その他の文明は3都市&3文明進歩という条件を満たすことができず、青銅器時代初期に留まることとなった。
ターン11〜15
プレイ開始から5〜13時間
11ターン目、交易を開始するとヌビア:齋田が驚くべきことを言った。
このターンに引いた交易カード5枚の内、2枚が交易不可の災害だったので、交易可の災害カードを引き受ける代わりに良いカードが欲しいというのである。
「同一プレイヤーが災害カードを3枚以上所持している場合、その内2つをランダムに選んで発動し、それ以外の災害カードは発動せず捨てる」というルールがあり、それを活用した形だ。
これによりヌビア:齋田は<漆>を6枚集め、<塩>3枚と合わせて220金の<民主主義>を購入するビッグプレーを見せた。
一方、ヌビア:齋田の手になかった唯一の災害である<内乱>がペルシアを襲う。<内乱>は「自身の人口及び都市を35点分(人口は1つ1点、都市は1つ5点)残し、残りを受益者に併合する」という恐ろしい効果であるが、この時隣接するバビロン:永山が受益者となっていたため、1都市および13人口がペルシアからバビロンの手に。ペルシア:神谷としてはあまりにも手痛い一撃となった。
この辺りから各プレイヤーの行動に変化が生じる。
あまりにも災害が頻発するため、各プレイヤーはもはや災害を恐れず交易に臨むようになったのだ。このゲームでは交易によるメリットが非常に大きく、また災害もそのターンの文明進歩の購入には基本的に影響を及ぼさないため、合理的な判断と言えよう。もちろん、文明進歩の購入により、災害を緩和することが可能になったのもそれを後押ししている。
ゲーム終盤になっても災害は容赦なく襲い掛かる。
14ターン目には9の山札の底に眠っていた<退行>が現れ、ついにすべての災害が姿を現すことになった。クシャーン:寺岡は<退行>を運悪く引いてしまい、ASTを1マス戻すという致命的な被害を受けてしまう。
15ターン目終了時のASTは以下の通り。シバ、ペルシア、インダス、パルティアが一歩リードするが、まだ誰も鉄器時代初期に進むための条件を満たしていない。勝利は誰の手に。
ターン16〜18
プレイ開始から14〜16時間
朝の9時から開始したゲームはもう23時になり、皆の表情にも疲労が浮かび始める。
しかしながら、ゲームが佳境であるため休むことは許されない。災害により領土が入り混じる状態となったことで、疲れた中でも難しい判断を迫られる。
そんな中、16ターン目にはインダスとパルティアが200金以上の文明進歩を累計で2つ獲得し、また都市を4つ維持したことで、ついにゴール一歩手前までASTを進めた。これでもう1つ200金以上の文明進歩を獲得し、都市を5つ維持すればゲーム終了である。
しかしながら、ここでペルシア:神谷がタイムリミットを迎え離脱することに。また、ヌビア:齋田も体力の限界を迎え離脱。重ゲーならではの避けられない事態である。
18ターン目、各プレイヤーは自力で交易カードを集め、200金以上の文明進歩を獲得し、ついにゴールである鉄器時代後期に到達した。これでゲーム終了である。
インスト開始からすると18時間、深夜27時のことであった。
得点計算の結果、インダス:中西が僅差で優勝となった。
インダス:中西 118点
クシャーン:寺岡 117点
バビロン:永山 117点
シバ:小林 113点
パルティア:木村 109点
ペルシア:神谷 途中離脱
ヌビア:齋田 途中離脱
16時間もプレイしたにもかかわらず、最後まで接戦になったのは特筆すべきことだろう。これにてHQGamesの東方帝国は幕を閉じた。
おしまい